緑の本3
2章
2.1 マクロに見る
熱力学において、マクロに見るとはどういうことか?
気体が壁に力を及ぼすとき、気体分子の一つ一つが壁に与える力や、壁を構成する原子一つ一つが受ける力はどうでもいい。
けっきょく、「壁全体が一秒間に平均してどれくらいの力を受けるか」に注目することが「マクロに見る」ということ。
(要するにどういったメカニズムで力を受けるのかとか、そういう細かいこと抜きに結局どれくらいの力を目に見えるこの壁は受けてるのか/受けたのかにだけ注目するということだという風に理解している。)
2.2 扱う状態の明確化
締め切った部屋でプロパンガスのボンベを開けると、部屋の中にガスが満ちてゆき、しばらく経つと部屋にガスが充満し、パッと見た感じなにも変化がないような状態になるらしい。
そんな状態は自分は見たことがないので知らないが、ともかく十分時間が経てば変化がなくなるだろうくらいは想像することはできる。
パッと見で(マクロに見て)変化がない状態を平衡状態という。
閉め切られたふた部屋の小屋があり、便宜上、左の部屋と右の部屋と呼ぶことにする。左右の部屋の境目にはドアがある。はじめドアは閉まっているとする。
左の部屋でプロパンガスのボンベを開けると次第に左の部屋にガスが充満していく。
しばらく経つとじゅうぶん部屋にガスが行きわたり、変化がなくなる。これを平衡状態Aとする。
次にドアを開ける。すると右の部屋にもガスが広がり、じゅうぶん時間が経つと左右の部屋に(つまり小屋全体に)ガスが行きわたり、これまた変化がなくなる。これを平衡状態Bとする。
AとBでは異なる平衡状態が実現する。ガスが広がる体積が異なるから。
与えられた条件下で(この場合だとどんな大きさの小屋で、左右の部屋はどちらが広くてどちらが狭いか、とかガスボンベの容量とかが分かっていれば)平衡状態AとBがどのような状態になるかを予言できる(つまりボンベを開ける前にどうなるかを予言できる)理論が平衡系の熱力学である。
平衡状態がどうなるか、ある平衡状態からどのような平衡状態に変化するかを予言できるが、その途中(平衡ではない状態=非平衡状態)がどうなるか(どのようにガスが広がるか)は予言できない。
キングクリムゾンが途中を吹っ飛ばし続ける世界で法則性を見つけて予言するようなものだろうか。自分で書いててうまい説明ではないなと感じる。雰囲気が分かればそれでいい。だいじょぶだいじょぶ。
非平衡状態を語るには、流体力学や非平衡の熱力学が必要になる。
2.3 熱力学の考察の対象になるマクロな物理量
圧力P(粒子ひとつがどんな力を受けたかには興味なし)
磁化(磁気モーメントひとつひとつがどのようであるかには注目しない)
温度T、エントロピーSなど、熱力学に特有の量。
熱力学におけるエネルギーの取り扱いについて
E=E全体運動+E全体位置+E内部
本文にはごちゃごちゃ書かれているが、要するにエネルギーを考えるときは、内部エネルギーだけとは限らないということ。扱う系によってトータルのエネルギーは何と何なのかを把握しておく必要がある。
複合系と部分系
ある系を、仮想的にせよ、仕切り壁によって実際に分割するにせよ、いくつかの部分に分けるとき、分割されたそれぞれの部分を部分系と呼ぶ。
そして部分系が集まってできる系(つまりもともとの系)を複合系と呼ぶ。
分割の仕方は考察に都合が良いように自由に分けてよい。
定義:マクロに見て均一な状態
系の中の、同じ形の同じ体積(形も体積も任意)の2つの部分系に着目した時、その部分系たちをどこから取り出しても、どんなマクロ変数の値も、2つの部分系で同じ値をとる(値の差がマクロに見て無視できるほど小さい)とき、その系の状態はマクロに見て均一な状態、あるいは単に均一な状態という。
相加変数、示量変数、 示強変数
これらについては、田崎熱力学における説明のほうが分かりやすい。以前書いたので省略。
束縛について
系を分割する壁が透熱なのか、それとも断熱なのか。壁は可動か固定されているか。
系の束縛にはいろいろな場合がありうる。そして束縛ごとに異なる平衡状態が実現される。