ノート

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緑の本2

第1章

熱力学には平衡系の熱力学非平衡系の熱力学とがある。非平衡系の熱力学は未完成で、限られた状況でしか成り立たないらしい。

「熱力学の基礎」で解説されるのは平衡系の熱力学。

 

自然界から抽出した考察の対象を系と呼ぶ。系にはマクロな系ミクロな系に分類される。

ミクロな系とは、原子分子電子とか、要するに肉眼で見えない物質とその物質たちの相互作用のこと。

マクロな系とは、10^{24}程度の粒子数(つまりアボガドロ数程度)が集まった系のこと。肉眼で見える、手で触れてたしかにそれと認識できるような物たちと、その相互作用。

マクロな系では、ミクロな変化(原子がはねたとか電子が飛び出たとか)、マクロな変化(分からないが、肉眼で見えるような変化か?)の両方の変化が起きうる。

熱力学の対象は「マクロ系のマクロなふるまい」

 

マクロな系をミクロに還元して解くことは不可能。つまり粒子それぞれについて運動方程式を立て、粒子同士の相互作用も考慮し、さらに粒子それぞれの初期条件を考えるなんてことはできない。

なので、マクロ系を理解するためには、粒子がアボガドロ数程度、あるいはそれ以上集まったような系ではじめて現れる系の特徴をとらえる必要がある。その特徴をできるだけ少ない変数で記述できれば便利そう。

マクロな系のマクロなふるまいを少数の変数で記述することに成功した例こそが熱力学。

 

熱力学の語り方には流儀がいくつかある。

なぜ流儀が発生してしまうのか?それは、理論を語り始めるときの要請が異なるから。要請とは数学で言う公理。要は話の初めに「これは前提にしておきましょうね」としておくルールみたいなもん。

Ⅰ:ミクロ系の知識を使う。(エネルギー保存則とか。要するに原子などの基本的な粒子の存在を前提知識として用いる。)

Ⅱ:使わない。

ⅠとⅡのそれぞれについてさらに場合が分かれる。次の二通り。

A:示量変数(粒子数やエネルギー)だけを基本的な変数として用いる。このやり方だと、温度が登場するのがかなり話の後のほうになる。

B:示量変数と示強変数を混ぜて使う。温度が序盤に登場する。

 

Ⅰ-Aの本。

  • Gibbsの論文。(そもそもⅠ-Aのやり方で熱力学を初めて論じたのがGibbsらしい)。山本義隆の熱学思想の史的展開の3巻で内容が紹介されている。
  • 清水明「熱力学の基礎」やさしいが説明がくどい。
  • 橋爪夏樹「熱・統計力学入門」易しさのかけらもない。かなりタカビーな本。
  • Callen「Thermodynamics」読みやすい。清水と内容は似るが、説明が簡潔で好き。
  • 放送大学出版「エントロピーから始める熱力学」清水のダイジェスト版。とても良い内容だと思うが認知度はなぜか低いと感じる。とっても良い本なので読んでみてね。

Ⅰ-Bの本。

  • 原島鮮(はらしま・あきら、と読む)、久保亮五の演習本。風間洋一の本も薄いところがよい。

Ⅱ-B

  • 田崎晴明「熱力学」最初に読んで全く理解できなかった悲しい思い出のある本。清水の本を読んで全体を俯瞰してから読むとわりかし理解できてほっとした。なぜかこちらを初心者に薦める先輩方が多い。